結婚相談所は、商品ではなくサービスを提供し、活動の費用が高額で料金体系が複雑、さらに男女の情が絡み合うという特質上トラブルが多い業界です。
しかし問題の大部分は、契約・中途解約時の問題、サービスに関する問題とある程度絞られ、内容と原因を把握する事で、多くのトラブルは未然に防げます。今回は、国民生活センターへの苦情内容を事前に把握する事で、不要なトラブルに巻き込まれないように解説していきます。
結婚相談所のトラブル件数の推移
結婚相談所のトラブル(国民生活センターに寄せられる苦情件数)は2010年を境に減少傾向にありますが、いまだに年間で1,800件を超える相談が寄せられています。2018年のトラブル件数は1,838件ですので、1日平均5件の苦情が国民生活センターに寄せられている計算になります。
2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
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2618 | 3204 | 2856 | 2980 | 3121 | 3237 | 3157 | 2810 | 2667 | 2452 | 2394 | 2157 | 1983 | 1810 | 1838 |
実際にあった相談内容をチェックする事で防げるトラブルも多くありますので、以下、具体的な事例を確認していきましょう。
結婚相談所のトラブル事例
国民生活センターには苦情・相談内容が数多く掲載されていますが、残念ながら閲覧しにくく相談内容が探しにくいです。そこで、この記事では、国民生活センターPIO-NETに掲載されているトラブル事例をカテゴリ別に抜粋して紹介し、何が問題なのかをコメントしていきます。法律関係は弁護士に相談するか国民生活センターのホームページを参照してください。
複数の要素が含まれており、どちらのカテゴリに分類するか微妙なものもありましたが、緩く「中途解約・契約に関するトラブル」「サービス・料金に関するトラブル」「勧誘に関するトラブル」「親との契約トラブル」「国際結婚に関するトラブル」の6つに分類してあります。
中途解約・契約に関するトラブル
結婚相談所のトラブルで最も多いのが中途解約に関する問題でしょう。主な問題として、以下のようなトラブル事例が挙げられます。
- 既払い金の返金が少ない
- 解約に応じてくれない
- クーリングオフができない
- 勧誘時の説明と契約内容が異なる
結婚相談所の契約をクーリング・オフしたが、業者が既払い金の全額返金に応じない。問題だ。どうしたらよいか。
クーリングオフ期間(8日以内)で返金に応じなかったとすると、悪質な結婚相談所で違法です。ただ、クーリングオフの対象期間を過ぎて解約を申し出た場合は、全額返金ではなく特定商取引法に準じた返金となります。(結婚相談所の料金 – 中途解約返金シミュレーション)
結婚相談所の事務所で契約を迫られ入会した。サービスの質が悪く中途解約したが返金されなかった。当窓口から指導してほしい。
結婚相談所はいかなる理由であれ中途解約の申し出があった場合、特定商取引法に定められたルールに準じて会員に初期費用の一部を返金しなくてはいけません。ただし、既に役務が提供されている(サービスがすでに提供されている)場合は、返金対象にはなりません。例えば、写真撮影をするために支払った費用やカウンセリングを受けた費用などがこれにあたります。
結婚相手紹介サービスと契約したが約束通りの紹介がないので中途解約した。高額な解約料を請求されたが、支払う必要はあるか。
結婚相談所が請求できる解約料(違約金)の上限は、「2万円または契約残額の20%のいずれか低い額を超える額を請求してはならない」と法律で決まっています。「高額」というのが2万円以上であれば支払う必要がありませんので、国民生活センターに相談しましょう。
5日前結婚相談所の説明を聞きに行き契約した、勧誘内容と異なる点がありクーリング・オフしたいと申し出たができないと言われた
- 勧誘内容と異なる点・・・こちらは事実不告知となります
- クーリングオフできない・・・契約後8日以内であれば結婚相談所は無条件にクーリングオフを受けなくてはいけません。さらに事実不告知の場合、無条件で契約解除できる期間は延長されます。
この相談所は、上記2つの点で特定商取引法に違反している悪質な結婚相談所です。国民生活センターに相談して大正解だと思います。
1カ月半前に結婚相談所に入会した。入会前に相手の職業について強い希望を持っていることをはっきり伝えたのに、条件と違う人ばかり紹介された。事業者から「親にうそをついて会ってみてはどうか」と言われ不信感を持った。退会を申し出たら、1年分の費用42万円のうち、12万円しか返金できないと言われた。精算書によると、登録費、プロフィール作成料、会員情報閲覧権利、 パーティー参加権利、月会費、違約金として30万円請求されている。サービスをほとんど受けていないのに、返金額が少なく納得できない。
役務(サービス)が提供されていないと思われる、「会員情報閲覧権利」「パーティー参加権利」については返金対象となります。もちろん月会費は1ヶ月分しか支払う必要はありません。ざっくりとした計算ですが、入会金が3万円、月会費が1万円、初期費用が27万円で役務提供前だと仮定すると、返金額は217,500円となります。月会費は支払う必要がありませんので、一括で支払っている場合は11ヶ月分の11万円がさらに返金されますので、その場合は327,500円が返金対象となるでしょう。
ただ、プロフィール作成料や登録料といった既に役務が提供されているサービスについては返金対象とならない場合があります。
参考記事:結婚相談所の料金 – 中途解約返金シミュレーション
サービス・料金に関するトラブル
サービスに関する苦情も多く掲載されています。中にはいい加減な結婚相談所もありますが、ほとんどの場合は結婚相談所と会員のコミュニケーション不足や説明不足が原因となるケースが多いです。内容をチェックしてトラブルを未然に防ぎましょう。
結婚相手紹介サービスの会社が、会員のことより利益優先で動いている。女性は無料だが男性が気の毒だ。指導できないか。
利益優先で動いている根拠が薄いですが、「女性が無料」というところが鍵となっています。女性は全て無料ですがお見合いなどは強制的に参加させられる、といった結婚相談所もあります。女性が無料の結婚相談所を選ぶ時は慎重に判断するようにしましょう。
昨年末結婚相手紹介サービス契約をしたが、1人もお見合い出来なかった。説明に相違があり、高額を支払ったのに納得いかない。
お見合いができなかった原因がどこにあるのか難しいですが、例えば会員システムが提供されていてお申し込みや申し受けができる状態で、さらにサービスにお見合い保証などが入っていない場合、原因は結婚相談所だけにあるとは言えないでしょう。
結婚相談所はお金を支払いえば必ず結婚させてくれるところではありません。「結婚相談所=結婚」ではありませんので、その点は消費者も理解した上で入会する必要があるでしょう。
1年間会員だった結婚相談所のサービス内容に不満だ。初回の見合い以外は紹介や見合いの設定が遅く、時間稼ぎしている印象だった
不満であっても1年間会員として活動した訳ですから、返金はあまり期待できないでしょう。結婚相談所の担当者に連絡して改善してもらうように伝えるか、担当を変えてもらうのがいいと思います。
セレブやエリート専門を謳う結婚相手紹介所に入会したが、コンサルタントの対応が悪く解約した。精算に不満だ。対処法はあるか。
精算金額にはルールがありますので、以下の記事をチェックしてみましょう。
参考記事:結婚相談所の料金 – 中途解約返金シミュレーション
結婚相談所のお見合い時間を間違え、30分近く遅れて到着したら後日遅刻の罰金を請求された。納得いかない。どうしたらよいか。
お見合いの時間に遅刻する行為やドタキャンには罰金を規定している結婚相談所が多いです。特にIBJなどの結婚相談所連盟を利用している場合、連盟側の規定で罰金が課せられる場合が多いです。この場合は、会員の方が遅刻しなければ問題なかった話ですよね。
勧誘に関するトラブル
結婚相談所の勧誘に関しては、「もう連絡しないで」といっても電話がしつこくかかってくるとか、なぜか違う結婚相談所から連絡がある、といった事があります。
よく電話がかかってくるという場合は結婚相談所もビジネスとしてやってますので、多めにみていただきたいですが、「連絡してこないで」と言った(オプトアウトと言います)にも関わらず連絡してくるのは悪質です。
そして、「なぜか違う結婚相談所から連絡がある」。これは論外です。個人情報(名簿など)が出回っている可能性があります。そう言った結婚相談所は、国民生活センターにすぐ連絡しましょう。
自宅兼自営の工場にいろいろな業者から勧誘電話が来る。中で1社、婚活業者に抗議をしたが逆に訴えると言われた。納得いかない。
無茶苦茶な相談所です。「いろいろな業者から」という点から個人情報(名簿)が出回っている可能性があります。そいうった結婚相談所は業者名や電話番号をメモして国民生活センターに通報しましょう。こうした結婚相談所が業界全体のイメージを落としており残念でなりません。
昨年勧誘電話があり結婚相談所へ行きしつこい勧誘を受けたが断ったのにメール勧誘が続き、その後も電話勧誘があった。
この相談所は、個人情報の取り扱いが甘いと言わざるを得ません。メールなど証拠が残る形で、「もう連絡してこないでください」とはっきりと示す事が重要です。
親との契約トラブル
結婚相談所の中には、本人ではなく親と契約するところもあります。中には本人の承諾なしで入会しているケースもありますので、注意が必要です。
結婚相手紹介サービス業者が電話後、自宅に来訪し高齢の親が私のためにと説得され契約したらしい。解約させたいがどうすべきか。
国民生活センターによると、親が高額な契約をしてしまうトラブルが多発しているようです。ご子息ご令嬢が独身で結婚してもらいたいと考えている場合、あらかじめ息子さん、娘さんに相談した上で入会するようにしましょう。
国際結婚に関するトラブル
日本には、全国に中国人やロシア人、ベトナム人の女性を紹介する結婚相談所があります。本当にいい相談所もあるのですが、契約金額が高額で国際結婚という壁もありトラブルが絶えません。本当に信頼できる業者なのかを見極める事が重要です。(国際結婚相談所に関する記事はこちらから)
結婚相手としてロシア人を紹介してくれる結婚紹介する会社に入会した。騙されているとわかったので、返金してほしい。
結婚相手紹介サービスの契約をし外国人と結婚したが殆ど結婚生活を送らず離婚に至った。事業者と相手に賠償や返金を求めたい。
国内の結婚相談所に登録し別の業者を通してベトナム人女性を紹介され国際結婚したが、入国後逃げられた。詐欺ではないか。
まとめ・関連記事
結婚相談所のトラブルは少しずつ減少してきていますが、年間1,800件以上の相談が国民生活センターに寄せられています。中身を確認すると、「中途解約時の返金などの契約について」と「サービス内容の相違」に関するトラブルがほとんどです。
この事から、入会前や活動中に以下の事を確認しながら婚活を進めるといいと思います。
- 契約時にしっかりと内容を確認する
- 結婚相談所のカウンセラーとまめに連絡をとる
- おかしいなと思ったらすぐに確認する
たくさんのトラブル事例を紹介してきましたが、結婚相談所は怖いところではありませんが、いくら気をつけていても不測のトラブルが発生する場合もあります。そんな時は、国民生活センターに相談してみる事をおすすめします。
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